何故だかわからないが、そのメニューの時は必ず一人はいる、今日の給食を把握している男子の声を思い出す。
「きょう、ちりこんかーんじゃん!」
牛乳が飲めず、食べられないものが多くて怒られがちな、給食が苦痛だった私のテンションを上げてくれる、オマジナイの言葉だった。
名前もわからない、見たこともない豆だらけ、コクがあってゴロゴロした食感も良く、茶色っぽいのにカレーではない。なんだかよくわからないけど、名前の響きと物珍しさに心惹かれた。
少なくとも家では絶対に出ないメニューに心躍る日が増えたのもよく覚えている。
私には今、なんでもおいしそうに食べる好き嫌いのない娘がいる。野菜が大好きな夫がいる。
そして、好き嫌いの多かった私がいる。
子供が生まれて、大量に消えていく野菜。購入する頻度が高くなり、美味しそうに頬張る娘にたくさん野菜を食べてほしくて、なんとなくオイシックスを始めた。
目に新しい野菜や果物に、毎日目を輝かせる娘。小さな果物泥棒は隙あらば野菜室を覗いて、庫内を露だらけにしていった。栗を拝借する時はトトロのどんぐり状態で、すぐ足がつくのである。
オイシックスで購入するものはどれも輝きに満ちていて、何より旨味があった。仕事に追われていた夫と小さな娘をつなぐ、きっかけが増えた。
市販の野菜を初めて美味しいと思ったあの時。
日々の食事は、心の栄養と知った時。
無性に分かち合いたい衝動に駆られた。
生きるために必要な栄養補給と思っていた、それまでの概念が、コミュニケーションに変わった瞬間だった。
幼児食チリコンカーンを塗りたくるように食べた娘は満面の笑みのピエロに。
夫も口端にたっぷりトマトソースが付いていた。
給食の思い出が、家族の味になり、きっかけをくれた農業にさらに興味を持った。
酷暑と言える夏は正直嫌いだけれど、夏が来るたびに私の農業や食事への信念を思い出させてくれる、エキゾチックな給食メニューだ。
チリコンカーン。
それはスパイシーなオマジナイ。
追記
キャンペーンにて優秀賞に選出頂きました!
ありがとうございます😊
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